うつ病の人の仕事上のミスの特徴
うつ病の症状が進行すると職場・仕事中にミス、それもケアレスミスを連発するようになってきます。もともとミスが多いという人は別かもしれませんが、その人らしくないミスに気がついたら「うつ病」を念のため疑ってみることは大事です。うつ病でダメージを受ける脳の部位とケアレスミスをするときの部位には共通点があるからです。
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うつ病のケアレスミスの特徴
うつ病になっている人やうつ病になりそうな人のミスの仕方には共通点があります。例えば、自宅の鍵を開ける動作と自動改札を通る動作はそれほど似ていません。しかし、うつ病になってくると「ポケットから何かを出す」という動作が似ているためか、この作業を間違える人が出てきます。仕事に向かう自動改札の前で自宅の鍵を出すようなミスをしたり、自宅に帰って、定期券を出すようなミスをします。こんなケアレスミスをするようになったらうつ病を疑い始めると早期発見につながります。
その他のうつ病によるミス
うつ病の症状に関連していると思われるミスにはいろいろなものがあります。例えば以下のようなミスもうつ病に関係があることがあります。「普段こと人は仕事でこんなミスをしないのにな!」と思うようなミスがあったら注意をしてください。
電話の取り次ぎミス
仕事で電話を受けたときに覚えないといけない「どの会社の」「誰から」「誰に」の3つのキーワード。うつ病の症状が進行するにつれて、これらを一時的に覚えていることが難しくなります。たった3つの単語を覚えて伝えることができない。間違って伝えてしまう。これもうつ病の兆候である可能性があります。電話の取り次ぎだけならばメモを取ることなどで回避することができますが、うつ病によるこの症状は似たような様々な場面でも起きてしまいます。簡単なことを一時的に覚えていられないのです。
遅刻・時間オーバー
うつ病の人は「よしやるぞ!」というスイッチが入りにくい傾向にあります。やらなくてはいけないとわかっていたり、このままでは納期を過ぎてしまうと思っていてもスイッチが入らないことがあります。結果として、納期をオーバーしてしまったり、中途半端な状態で納品するといったミスにつながります。単純に定時に出社するという期限を守れずに遅刻をすることもあります。
名前の呼び間違え
「田中さん」と相手のことをわかっているのに「山田さん」とずっと言い続けて気がつかない。そんなミスをし始める方もいます。何度も間違えていても気づかないだけでなく、「田中さん」とは長い付き合いで間違えるはずがないのに間違えるということもあります。
うつ病によって集中力が低下する
うつ病になるとケアレスミスだけでなく、集中力が低下してしまいます。やらなくてはいけないという意思を持ち続けるのが難しくなるのがうつ病の特徴なので、期日を過ぎても結果が出せなかったり、だらだらと仕事を先送りしてしまうこともあります。
仕事へのやる気はあったり、上司や同僚に申し訳ないという気持ちを持ちながらもうつ病の症状として集中力が低下して、ミスをしてしまいます。
仕事中の物忘れによるミス
うつ病になると脳内伝達物質がうまく分泌されなくなります。その影響で頭が回らなくなります。覚えられない。覚えても思い出せないという症状に悩まされる方も少なくありません。
うつ病かなと思ったら!
うつ病であることを会社に相談
以前に比べるとうつ病に理解がある会社が増えてきました。しかし、うつ病になったというと「仕事量が少ないのに給料や待遇が同じだ」とか「ストレスが弱すぎる」とレッテルを貼られてしまうこともあります。しかし、ケアレスミスをするような段階になっているとしたら、いずれうつ病のために仕事仲間に迷惑をかけたり、良くない評価をされてしまいます。「仕事への意欲がない」と思われるのも「うつ病」と思われるのも喜ばしいことではありませんが、会社にうつ病であることを理解してもらうことが治療や休養への第一歩になります。
実際に難しいうつ病の相談
実際にうつ病になって会社と相談をしようとすると非常に難しいケースが良くあります。会社側もうつ病に対しての接し方が良くわからないのでおかしな対応をしてしまうからです。
<うつ病実話>作り話をしてまで敵にしたいのか?
国産ディーラーで営業職をしていた時のことです。ノルマノルマの世界で、毎月増えていくノルマと上司からの圧力に嫌気が差し、だんだんと精神的に病んでしまいました。体調も崩してしまったので上司と会社の上層部の方と面談をして、一旦休職をすることになりました。一旦1ヵ月仕事を休んでリフレッシュしてみようという話になったので、とりあえず体調を元に戻すためにも家で体を休ませることにしました。
薬も眠気の副作用があるものだったので、スマートフォンに続々と連絡が来ているのには気づきながらも寝てしまい、起きた時の連絡数に驚きました。ほとんどが同じ職場の同僚や後輩からの連絡で、「会社を辞めるって上司から報告があったけれど、本当?」というものでした。
休職することにはなったけれど、退職するなんて話は全く面談では出てこなかったので、そんな話になっていることに驚きました。同時に、「営業職って1度でも仕事ができなくなったら使い捨てなのかな」という悲しい気持ちになりました。しかも、私は精神病にかかっているなんて一言も言っていないのに「どうやらうつ病みたいな感じらしい」と終礼で言われたと報告があったのです。
確かに、私が休職している間も支店に課せられるノルマは変わらないので、同じ支店の人には迷惑をかけるかもしれませんが、そこまで作り話をしてまで敵にしたいのかと悔しい気持ちになりました。その後、人事の方に連絡をして事情を話し、休職ではなく退職にしてもらいましたが、謝罪などは一切ありませんでした。
まずうつ病改善が最優先
うつ病の状態で無理を続けていても症状は悪化して行ってしまいます。休職をするか、ミスが始まった時点で早期にカウンセリングを受けるなどする必要があります。元気な状態の人と比べて、うつ病の状態の人は小さな仕事上のミスひとつでも悩み方が違います。ミスによって自分を責め、仕事の能力のなさを嘆き、職場の人に迷惑をかけたことを嘆きます。小さなミスによってうつ病の症状が悪化し、うつ病の症状が悪化しているので小さなミスが大きなミスに思えてくるという悪循環が止まらなくなります。
産業医と相談ができるなら相談に乗ってもらいながら、休職の手続きを進める方が良い場合もあります。必要に応じて、休職や傷病手当金、労災保険などを考慮して長期の改善計画を立てることも視野に入れてください。
仕事のミスを自分一人で背負わない
特にうつ病の人は真面目な人が多いので、仕事上のミスを自分のせいだと思いがちです。自分一人で責任を負おうとすると余計に負荷がかかってしまうので、理解出来る仲間(ピアカウンセラー)とともにフォローし合える環境を作っていくことが重要です。
部下などのうつ病への対処方法
ミスを怒ったり、責めたりしない
ピアカウンセラーが社内にいれば、その人がミスのフォローや上司との通訳係をするのが最善の方法です。もし、そのピアカウンセラーに闘病経験や休職経験があれば、うつ病になりかけてミスをし始めた人の気持ちを理解することができます。必要以上に怒ってしまったり、責めてしまうことがないように間に入って、仕事量や責任の調整、ミスのフォローをすることができれば上司の負担も軽減され、当人のうつ病によるストレスも軽減することができます。
退職よりまず休職を勧める
退職をしてしまうとそれ以降の生活を完全に自分の責任でコントロールしなくてはなりません。また、いったん退職をしてしまうと再就職をするのは難しいものです。可能であれば、休職をし、社会との縁を切ってしまわないようにしつつ、心身を休めることが重要です。部下がうつ病になったら、休職をして様子を見ることをまず勧めてください。休職期間が終わってもうつ病が回復しなかったら、それから退職を考えても遅くはありません。