会社で普通に起こりうるパニック障害 「予期不安」のきっかけ
よく聞くパニック障害って何?
芸能人の方でパニック障害の方がたまにいるので時々話題になるパニック障害。
なんとなく、電車に乗れない、人混みが苦手、人前に出るのが無理という人がなっていて、パニックというくらいだからパニックになるのかな?という印象だと思います。
そのイメージは概ねあっていて、実際のパニック発作と言われるものは激しい呼吸困難やめまい、手足のふるえ、動悸、吐き気などパニックを起こしていそうな人の症状と一致します。
実はパニック障害というのはこのパニック発作が一度起きてしまったことによる、また、起きるのではないかという過度な「不安」から引き起こされるものです。もちろん、パニック発作を繰り返す方もおられますが、実際には、10回に一回起こるかもしれないという不安に襲われている時間のほうが長くて苦しいものです。
パニック障害の症状
では、具体的なパニック障害の症状をみていきましょう。
大きく身体症状、精神症状の2つに分けられます。発作の現れ方としては症状のピークは10分と言われていて、ピークをすぎるとどんどん収まると言われています。しかし、突然、ダメになるというものでもなく、10分経てば絶対に落ち着くというわけでもないので、油断は禁物です。
動悸・息切れ(身体症状)
よく言われるものは心臓がドキドキするという表現ですが、実際は全速力で走ったあとのドキドキ感のようなものではないこともあります。心臓が口からでそうなくらい、心臓が爆発してしまうのではないかというくらいの感覚の動悸です。
手足の震え、冷え(身体症状)
自分の意志とは関係なく、全身が震えます。寒くてふるえたり、とても緊張しているときにくる震えの感覚の強いものを感じます。自分の意志で制御できないので、それで全身がしびれてきたり、冷えてきたりすることもあり、身動きがとれなくなってしまいます。
胸が苦しくなって呼吸が難しくなる(身体症状)
動悸のところと少し近い話ですが、胸が苦しくなるのでその分呼吸が苦しくなります。
息の吸い方、吐き方の仕方がどんどんわからなくなって、過呼吸のような状態になってしまうこともあります。
制御できない恐怖(精神症状)
とても強い恐怖感に襲われているため、その気持ちをまるで制御できません。そのため、さらに制御できないことが恐怖につながっていき、どんどん発作が辛くなっていきます。
世界が真っ白に見える(精神症状)
人によっては視覚の情報もおぼつかなくなってしまい、見えるものがすべて真っ白になってしまうこともあります。血の気が引いてきているときになにも考えられなくなっていく感覚に近いです。
なんでパニックになるの?「予期不安」の仕組み
具体的な症状をご覧になっていただいて、お気づきの方もいるかもしれませんが、この症状が一度起きてしまったら、もう一度起きたらどうしようと不安になってしまう気持ちがわかるかと思います。その気持ちこそが「予期不安」です。この予期不安というのは、もし、こうなったらどうしようという事柄から、同じことが起きたらどうしようという漠然とした不安などです。こうした不安がちょっとずつちょっとずつ蓄積していき、コップの水がいっぱいになってあふれかえるようにして、パニック障害が発症してしまいます。
うつ病併発の可能性大!
うつ病からパニック障害になる方もいますが、パニック障害からうつ病というパターンもあります。
上記のような症状がずっと続くとそれだけで気が滅入ってきて、元気はなくなっていきます。ちゃんとした生活が送れなくなってくるので、そうした不安も襲ってくるようになります。そうすると、最初は平気でもどんどん何も考えられなくなっていき、うつ病へと悪化していくこともあります。
重症化すると・・・?
もし、パニック障害が重症化してしまうと、うつ病になるといったことだけでなく、本人の性格が攻撃的になってしまうこともあります。どうしようもない不安感が長期間続いていれば、いろんなことに過敏になって攻撃的になってしまうというのも想像に難くありません。寝不足のときに、つまらないことをされると怒りたくなる感覚のもっともっと大きい感覚です。
では、次に、会社で普通に起きてしまうパニック障害のきっかけのエピソードをご紹介します。
予期不安を発生させてしまうエピソード
私は、求人に関する広告代理店で事務として働いています。
雇用に関するお仕事なので、世間でたくさん入社や退社がある春を前にした冬の終わりごろから急激に忙しくなります。
そんな冬の終わり、まず、同じ部署の先輩がインフルエンザにかかり、1週間出社禁止に。
一人いないだけで業務量がパンパンになる部署なので、みんな戦々恐々としていました。
そしてその数日後、私も高熱が・・・。
重い身体を引きずって病院へ行くと、やはりインフルエンザ。
お医者さまには「社内にインフルエンザの人がいたらもうしょうがない」と言われました。
おそるおそる会社に電話をかけ、上司へ報告。
「すみません、インフルエンザでした。今週いっぱいは休むようにとのことです」
と伝えると、上司は大きくため息をつき、こう言いました。
「わかった。なってしまったものはしょうがないけど、ちょっと体調管理が甘いんじゃない?」
ただでさえ体調が悪くてフラフラなのに、精神的にも大きくダメージを受けて、とても落ち込みました。
確かに、気を付けていればかからなかったかもしれない。インフルエンザの予防接種も受けていませんでした。
でも、予防接種は会社が負担してくれるわけでもないし、最初にインフルエンザになったのは他の人なのに…。
上記のようなことを言われても、最後に「お大事に」とか「ちゃんと休めよ」とかのひと言があればまだ違ったかもしれません。
知らず知らずにパニック障害の加害者に
言葉というものは難しいもので、どう伝わるかは相手次第です。同じことを言って全員に同じように伝わるということはありません。きっとこの上司の方も悪気があって、こんなことを言ったのではないと思います。
ただでさえ、忙しいときにインフルエンザにかかるなんて…、そう思うのは企業の管理者として当たり前のことです。しかし、言われた方はいつまでもこの言葉を引きずってしまいます。みなさんもいくつか、言わないほうがよかった言葉の数々が思い当たる節、言われた言葉の数々があると思います。
そのあと、どう取り繕っても聞いてくれないこともあるでしょう。会社だと言い訳するなと言われてしまうかもしれませんね。しかし、それは個人同士の話でも同じです。
知らず知らずのうちに何かの一言がきっかけでパニック障害、不安障害を引き起こして可能性というのはあります。あのときの話はそういうつもりではなくて、と弁解してもわかってもらえるかもしれませんが、その人が心から復活するのには時間がかかってしまいます。
労災認定が現在ではまだ降りづらいという現状がありますが、もし、あなたの発言が原因で発症したということが原因でという形になってしまったら、発言者のほうの責任が非常に重くのしかかってくるかもしれません。
今後、どういった責任を上司や会社が取らされてくるかはっきりとしたことがわからないので、エピソードの中にもあったように、本人がどうしようもなく困る状況に追い込まれているときには、ねぎらいの言葉を振り絞ってかけてあげて、自分が落ち着いたなと思ってから、自分のつらさを説明するように次は気をつけてねというのがよいでしょう。
また、病名で見切りをつけて接するのも悪くはありませんが、実際のところは病名と症状はとても複雑で一概にはいえません。そのため、どの病気だからどうこうという話ではなく、本人が何でつらいのか、どうしたらよくなるのだろうか、その視点から見るのがよいでしょう。