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大切な部下がうつ病になった時の接し方

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今まで苦労を共に乗り越えてきた大切な部下がうつ病になった途端、突然会話が成り立たなくなります。信頼関係で結ばれていた絆が壊れ、責任の所在、治療の見通し、他の社員とのバランスなど様々な障害が表面化してきます。そんな時のためにうつ病になってしまった部下との接し方のポイントをまとめました。

一般論:うつ病の部下への接し方

まずは一般的に正しいとされている接し方をご紹介します。「正しいとされている」と書いているのはうつ病の人はマニュアル対応で救われるほど単純ではないからです。基本的な考え方として、お読みください。

望ましくない接し方

うつ病になってしまった部下に次のような接し方をすると症状を悪化させてしまう危険性があります。

「頑張れ」と言ってはげます

うつ病の人は会社に出勤してくるだけでも大変な思いをしています。電車に続けて乗れずに乗ったり降りたりを繰り返しながら長時間かけて通っている人もいます。本当はひとりで静かにしていたいのに頑張って人前に出ている人もいます。すでに「頑張っている」状態の部下に「頑張れ」と不用意に言ってしまうと「頑張っているのにこれ以上頑張れということですか!」と傷つけてしまうことがあります。多くの場合、安易なはげましは逆効果になりますので注意が必要です。

わかったつもりの反応・評価

「それはすごいですね!」
「いや、すごくなくて・・・」
「頑張りましたね」
「いや、頑張ったというよりは・・・」

うつ病の状態にある部下は一般常識で測れるようなコンディションではありません。寝ているだけが精一杯の日もあれば、出社することができる日もあります。活動量が増えたからといって、「すごい」「頑張った」と感じていないこともあります。また、できたときに評価されてしまうとできない時に自分を責める理由にもなります。

白黒をつけるような言動

上司はうつ病の部下に良かれと思って、「気の持ちようだ」「薬を飲んだ方が良い」「それはダメだ」とアドバイスをすることがあります。そんな言葉が耳に残ってしまって、余計に追い込まれてしまう部下も少なくありません。「気の持ちようだ」と思える日も「気の持ちようだけで何とかなるものか」と思っている日もあるうつ病の部下からしてみたら、白黒をつけられた記憶が次の行動を制限したり、不要な葛藤を生み出してしまいます。

 

望ましい接し方

それではどのように部下と接したら良いのでしょうか?

部下の気持ちを尊重する

うつ病の根底には相反する気持ち(葛藤)があります。うつ病になってしまった部下は「頑張ろう」という気持ちと「うまくできない」という気持ちがぶつかって大きなストレスを感じてしまっているのかもしれません。あるいは「自由にやってみたい」という気持ちと「上司に従わなくてはいけない」という気持ちがぶつかっていることもあります。部下の気持ちはロジカルではありません。多くの場合、矛盾していたり、グチャグチャになっています。だからこそその部下はうつ病になっているのです。論理的整合性は無視して、気持ちを十分に聞くことができると部下のうつ病が少し楽になるかもしれません。

会社側の責任を整理する

職場における最も大きなストレス源は人間関係です(厚生労働省「労働者健康状況調査」)うつ病の原因が職場にないか、部下がうつ病になってしまったのをきっかけに整理しなおしてみることも大事です。

  • 職場内での人間関係によるストレス
  • 長時間労働
  • 取引先などとのトラブル
  • 仕事量が多すぎること、少なすぎること
  • 職場への拘束感が強い
  • 神経を使う仕事が多いこと
  • 職場環境が良くないこと

特に特定の個人との人間関係においてストレスを感じていることも多く、さらには同じ個人との関係で第二第三のうつ病の部下が発生してしまうこともあります。日常的な接し方もこの機会に整理してみると良いでしょう。

責任の少ない補佐的な立場へ

うつ病になると余裕がなくなります。責任が重い仕事は精神的な負担になるだけでなく、職場以外での心理的な負担もあります。一時的にでも補佐的な仕事にシフトして、心に余裕を作ります。うつ病にとって休養は非常に大事です。

 

一般論では理解しきれない部下への接し方

ここまでうつ病の部下への接し方を一般論としてご紹介してきました。上記の対応は間違っているわけではありません。職場で判断するための目安としては信じて良いと思います。ここからは「そうは言ってもマニュアル対応されてもな」と思う当事者の視点からの「うつ病の部下への接し方」をご紹介します。

望ましくない接し方

うつ病であることを考慮しないかのような無神経な接し方で傷つく部下は多いと思いますが、とってつけたように薄っぺらいカウンセリングマインドを振りかざされる方が余計に気を使います。特にインターネットや本で読んだだけの知識で対応されるとうつ病の部下にはそれが伝わってしまいます。

「頑張って」が禁句だと調べた

自分のために勉強してくれているのは嬉しい部分もありますが、それ以上にそれでわかったつもりになられることに苛立ちや馬鹿にされている感覚を覚える人も少なくありません。「あ、調べたんですね!」と見透かされるような対応は多くの場合、逆効果になります。

企業人として殺される

「うつ病が悪化しないように・・・」と考えてもらうことは仕事をしやすい職場という意味ではあっているかもしれません。しかし、一方でうつ病になってしまっていてもその部下にはビジネスマンとしてのプライドも覚悟もあるかもしれないのです。過剰に仕事から遠ざけられたり、腫れ物に触るような接し方をされたりすれば人としては楽になるかもしれませんが、一線で戦ってきたビジネスマンとしては死刑宣告をされたように感じる人もいます。仕事が少ない方が楽とは限らないのです。

決められないのに傾聴されても困る

うつ病の渦中にいる人は思考力、判断力が著しく低下しています。さらには自信もないことでしょう。それなのに「どうしたいんだ?」と傾聴されても自分の意見を決められなかったり、自分の発言に自信を持ったり、責任を持てずに困ってしまうこともあります。「相手に主導権を与えて、聞き手に徹して、広い枠組みで・・・」と書いているマニュアルが多いように思いますが、主導権をうつ病の人に渡すということは責任を放棄するという意味にもなります。せめて、「責任は俺が取るから、どうしたら良さそうか?」と聞いて欲しいです。

望ましい接し方

うつ病の回復の助けになる接し方もあります。うつ病になってしまった部下はおそらく一日中「うつ病」のことを考えています。うつ病のことを考えすぎて、「自分」=「うつ病患者」という図式が完全に出来上がっているかもしれません。もし、そうだとしたら、あるいはそれに近かったら、うつ病から抜け出すのは難しくなります。

さりげなくテーマを切り替える

カウンセリングをしていると「サッカーが好きだ」「猫が好きだ」と話が横道にそれが瞬間に笑顔になるうつ病患者が少なくありません。「自分」=「うつ病患者」という図式を外せば、「自分」=「サッカー大好き」のような一面も(うつ病の最中であっても)残っているのです。上司が普段から部下の趣味や好みを把握しておくことができれば、部下がうつ病になった時こそさりげなく別のテーマで部下をうつ病から遠ざけることもできます。「夢中になってサッカーの話をしていたら少し楽になりました」これはうつ病の症状を軽減する効果すら期待できます。

仕事の量より好みを重視する

睡眠障害が出ている人にパソコンの入力作業を任せたら眠くなってしまいます。倉庫作業のような全身を使う仕事の方が楽かもしれません。もし、明石家さんまさんのような性格の人がうつ病になったらうつ病であったとしても誰かと関わって、笑ってもらう時間が必要かもしれません。うつ病の真っ最中でもステージに立つ方が良い人もいます。一般的な量や負荷の感覚ではなく、本人の感覚に合わせた仕事をチョイスすることがポイントです。そういう意味では仕事の負荷が大きい方が集中できる人もいるので仕事を減らせば休息になるというのはうつ病には必ずしも当てはまりません。

本質的に重要な接し方のコツ

「環境レベル」「行動レベル」の解決策は実はナンセンス。

「頑張って!」と言った方が良い?

うつ病の人でも「頑張って」と言って欲しい時もあります。でも、いわれると「頑張っているのに!」と傷ついてしまう時もあります。行動レベルでは「頑張って!」と言うか言わないかという議論になってしまいますが、この次元の低いマニュアルがナンセンスなのです。信頼できる人物、尊敬している人物から言われる分には「頑張って」というのが励みになりますし、場合によってはうつ病から抜け出すきっかけにすらなります。どんな存在として関わっているか?「存在レベル」での関わりがしっかりしていれば、「頑張って」と言って良いか悪いかという解決策はそもそもナンセンスなのです。

小手先のマニュアルの害

メンタルケア的な関わり方が心理学だとしたら、恋愛も心理学です。恋愛をする時に「頑張ってって言っちゃいけない」のようなマニュアルが役にたつでしょうか?マニュアルを頼りにしていたらおそらく恋愛は上手くいきませんし、セオリーを無視する接し方が恋愛を成功させるかもしれません。恋愛を上手にするコツはマニュアルの本ではなく、相手をしっかり見て、相手の話をしっかり聞いて、臨機応変に対応することではないでしょうか?小手先の綺麗な言葉よりも愚直な誠実さが伝わる恋愛もあります。マニュアルを片手に「頑張って」って言わないよ。とされるよりは誠心誠意向き合いながら搾り出した言葉が「頑張って」だったとしてもうつ病の当事者としては嬉しいのではないでしょうか?

 

多くの上司に足りないもの

うつ病の部下を抱えた多くの上司に足りないものは「愛情」でも「コミュニケーション能力」でもありません。うつ病そのものへの理解です。うつ病になってしまった部下は例えて言うなら外国人になってしまったようなものです。言葉が通じない。ニュアンスが伝わらない。基本となる感覚が違う。

ピアカウンセラー養成講座の意図すること

うつ病実体験がある人にうつ病生活について、うつ病と職場について語ってもらい、それをじっくり聞いていればうつ病の感覚は体験がなくてもわかります。そして、多くの上司は一般的なカウンセラーよりもコミュニケーション能力が高い人も多いですから、うつ病の実態さえ感覚でつかめれば十分に対応することができます。

ピアカウンセラー養成講座は全国で受けることができます。大切な部下のために1日を使って、うつ病への感覚を身につけてみませんか?この経験はこれから先たくさん現れるであろうメンタル不全者の対応に必ず役に立ちます。

ピアカウンセラー特別講習会

うつ病・パニック障害の人の本音がわかる


当事者の声を中心に構成されているので、見るだけで「うつ病」「パニック障害」「強迫性障害」「休職者」の気持ち、対応する時の感覚がつかめます。

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