病歴の詐称と社会保険労務士
病歴の詐称と社会保険労務士の役割
私が総務部長をしていた健康機器の販売会社での経験です。その会社は上場を目指して準備中で、総務、人事、経理、法務などのスタッフ部門の中途採用が日々行われ、管理部門では一般社員から管理職まですべて中途採用者が占めていました。その中で人事課長職で保険会社からの転職で入社してきた男性管理職が入社半年ほどでメンタルに不調をきたしました。
顧問の社会保険労務士とも相談の上対応し、結果として退職していただくことになりましたが、当人の採用から退職までに会社が負った損失は多大でした。
当人の採用活動費はもちろん、営業教育ツール作成の中断、当人が採用した社員の出来の悪さ、担当課員のモチベーション低下、など数え上げればきりがありません。
当人のケースは、前職退職後に1年弱の空白期間があり、その事実だけで特定するわけにはいかないものの結果から考えると、前職で既にメンタルに不調をきたしており、その療養期間だったと思われました。社会保険労務士によると、そのような病歴の詐称を防ぐことは難しく、入社前の告知との相違を根拠に事後的に退職や損害賠償を請求することはできても、100%の事前防止策は無いとのことでした。
会社と従業員は敵か味方か?
人は敵だと思った人に譲歩したくはありません。入社時に会社を敵だと思って、警戒し、病歴を詐称してでも入社をしようとするのは会社を信頼できず、自分の身を守ろうとする行為です。いまのメンタル不全者が多い社会情勢からするとそれもやむを得ない部分があると思いますが、信用できない会社に入るということ自体が矛盾していることに多くの方は気づいていません。従業員が会社を敵とみなし、自分の身を守るのと同様に会社も従業員を敵とみなし身を守ろうとします。そういう場合に社会保険労務士は会社側の立場としてスキルをはっきりします。現実的なレベルでの問題としては敵からどう身を守るか?ということになりますが、実は会社と従業員がいかに信頼しあえて仲間意識を作れるか?社会保険労務士の仕事はどちらがメインなのでしょう?