専門家でも判断が難しい統合失調症 職場でもできる取り組みってある?
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うつ病と統合失調症は専門家でも判断が難しい
メンタル系の病気はあちこちの病院を行くと診断名がコロコロ変わります。
そのときの話の内容、表情、様子で病状の程度も左右されます。数値などの指標で判断できないため、このようなブレが生じてしまうのは人間がやっている以上、正確な判断というのは今後も難しい課題でしょう。
さて、その中でも判断を間違えやすいにも関わらず、初期の対応を間違えてしまうと大きい問題になってしまうのが統合失調症とうつ病です。
統合失調症の3つの症状
1.認知障害
仕事などの作業スピードが極端に落ちていたり、物事を覚えられなくなっていきます。また、注意が散漫であちこちに気が散って集中できないということも起こります。
認知という名前がつくこともあり、表面的な字面だと認知症や発達障害も近いものがありそうですね。
また、気分が落ち込んでいる人の特徴としてもこういったことはあげられると思います。とてもつらいことがあるときに、今まで通りの作業スピードに加えて、物事を覚えろというほうが無理があるでしょう。注意力に関しても同様です。
2.陰性症状
喜怒哀楽の起伏がなくなってしまうことや、人との交流を断ってしまう社会的ひきこもり傾向になることがあげられます。また、感情がとにかくフラットにみえるので、他人や他の物事への無関心や物事への関心がなさすぎるため、集中力が低下しているようにも見えます。
定時出勤定時退社、仕事はしっかりノルマをこなすし、大きい飲み会とかにもちゃんと参加するし特別問題はない。でも会社で誰かと話しているのを見たことなし、私的な交流には一切顔を出さない。
このあたりは少しうつ病と近いものがありますね。気分が非常に落ち込んでしまうと喜怒哀楽の起伏がなくなってどんどん無気力になっていく。仕事のミスは本人の能力の問題かもしれないし、つらければ面倒な飲み会にはなるべく出ないようにするというのも考えられる話です。
3.陽性反応
幻聴や幻覚、被害妄想が出てきます。またそれに付随して、異常な行動や精神錯乱につながっていきます。この症状が統合失調症の一般的なイメージでしょう。また、この症状が慢性的につづいている人の自殺率は普通の鬱病の人の自殺率の10倍とも言われていて、とてもつらい症状であることがこうした数値にも現れています。
うつ病の方でもこうした症状が出ることはあります。しかし、ここまでの病状が現れたときに、鬱病の人と違うのが「病識」の差です。
病識とは、自分が病気であるという自覚や判断ができるかどうかです。統合失調症の人は総じて、幻覚などが本当のことだと本気で思っています。段階的には1の認知障害からつながっているため、ジワジワ判断力は奪われていて、感情の起伏はなくなり、それで最後に聞こえてくるのが幻覚や幻聴であれば、病気であるかどうかの判断は難しいでしょう。
誤診の難しさ
ここで問題なのが、2段階目の陰性症状におけるうつ病との誤診、または単純に本人の性格であることです。
まずは本人の正確としては、社会的なことへの無関心な人のことを、シゾイドパーソナリティといいます。いわゆるコミュ障と呼ばれている人たちとの遺伝的な性質の近さがあることが発見されてきています。
本人がつらい環境にいなければそれでなんの問題もないですが、異動などで社会的な交流を求められる現場に出されてしまうと、うつ病へ、統合失調症の初期症状であった場合には、幻覚などのひどい症状へとフェーズを進めてしまいます。
また、薬の問題もあります。統合失調症の薬とうつ病の薬は効き方が違っていて、統合失調症の人にうつ病の薬を投与すると逆効果であることがあります。
病院に行ったのによくなるどころか、ひどい方向に進んでいるようであれば本当に誤診である可能性もあります。
こうしたこともあるので、医療の現場でも判断が難しいことを普通の人事の方が判断してしまうというのがかなり危険な例である一つです。
職場でできる対応とは?
幻覚や被害妄想が激しい場合は、早めに医療機関への受診をすすめましょう。しかし、本人は以上である自覚がないので普通に勧めても難しいです。なので、まわりの健康状況、例えば、被害妄想で毒が入っているというのであれば、それをダシにして、本当に毒が入っていると大変だから一度見てもらいなよという感じです。
そして、一番難しいのが復帰です。社会的な交流を閉ざし気味な人が長時間休養していると本当に生活力が落ちて、そちらの方で次の問題を発生してしまいます。
周囲の方の協力ももちろんですが、具体的にその会社で何をしたらよいのかは、なるべく社内にいる経験者、または近くにいる経験者に聞くのが良いでしょう。病状も様々でいくらプロの研修施設があっても、個別性には対応できません。ましてや、病気を経験したことがない人が作っている可能性もあるので、表面的には効果があるかもしれませんが、本人にはなんの効果もない可能性があります。
そのため、その会社でその人が入る職場において、何をどうしたらよいのか、何が一番つらい可能性があるのかを経験者(ピアカウンセラー)に聞いてから、具体的な施策を打ち出すのが良いでしょう。
まとめ
仕事というと人と交流できてこそ、と言われていますが、人と交流できるけど事務作業がまるで苦手な人もいます。このタイプの逆の人がもくもくと事務作業をこなす人と考えれば、この両極端の中にいろんなグラデーションの人がいます。むやみに特性に合わないことをさせてしまっては能力の開発どころか本人をつぶすことにもつながってしまいます。
適材適所とはよく言いますが、その人にあった職場をなるべく提供してあげることが、むやみにメンタル系の病気を引き起こさないだけでなく、会社にとっても一番いい結果をもたらすでしょう。